鳥人間コンテスト2024(滑空機) 8位/234.51 m
鳥人間コンテスト2023(滑空機) 7位/198.10 m
鳥人間コンテスト2022(滑空機) 総合3位・学生1位/425.65 m
東京理科大学鳥人間サークル 鳥科
代表・坂口
翼班長・小豆島(あずしま)
接合班長・福田
コックピット班長・加茂
電装班長・栗山
パイロット・竜海


鳥人間サークル「鳥科」とは(談:代表・坂口)
私たちは、毎年夏に行われる「鳥人間コンテスト・滑空機部門」での優勝を目標に、一年ごとに滑空飛行機の設計・試作・本制作・検証・運用練習を行う学生チームです。組織は、翼・コックピット・接合・電装の4班を中心に、当日の段取りと飛行全てを担うフライトチーム、構造・空力の設計陣、そしてシミュレーターやデザインなどの小班が横断的に連携して活動しています。
夏から秋にかけては次年度に向けた試作と改善を行い、11月の学園祭・オープンキャンパスでの展示を通じて広報に努めます。12月の桁試験で骨組みの耐久性を検証したのち、春休みから本制作を加速させ、6月中旬の機体完成を目安に「壊さない運用」へとフェーズを切り替えます。特に12月の桁試験がとても重要で、この試験に合格できないと、鳥人間コンテストには出場できません。
乗り込み練習や、運搬・組立の動線リハーサルを重ね、本番当日の品質と安全を確実なものにします。作業の標準化と教育を並行して進め、属人化を避けながら「安全・再現性・次年度への継承」を最優先に活動しています。

今年の鍵は、「剛性」と「上反角」の両立です。姿勢安定と運用性を高める二段上反角を採用しつつ、その導入で生じがちな剛性の低下を、CFRP桁(炭素繊維強化プラスチック)の加熱接合(テーピング)による一体化で補強しました。これにより、しなりの設計自由度を確保しながら必要な剛性を満たす構成を実現しています。運用面では、上反角によって組立時の高さと運搬負荷が増えるため、三点支持や持ち手の配置、人数の再設計など、「運用で壊さない」ための段取りを刷新しました。さらに、ピトー管・気圧・GPS等で飛行ログを可視化し、パイロットの入力と機体の応答の関係を定量化してチューニングに活かします。
意匠のテーマは、今年のパイロットの名を冠した「竜海」。
渦や水流のイメージを“線形”ではなく“たわみ”で表現し、昨年の直線基調からの転換を図りました。
構造・空力・運用をひとつの解に束ね、最適解で確実に飛ばすこと。その積み重ねが、記録更新とチームの成熟に直結すると考えています。



翼班(談:翼班長・小豆島(あずしま))
私たち翼班は、全長約25mにおよぶ機体の主翼を製作する、鳥科で最も人数の多いチームです。滑空飛行機の“顔”ともいえる翼は、多くの新入生が最初に憧れを抱「花形」のパートでもあります。その役割は、巨大な構造物を、カッターや接着といった一つひとつの手作業を積み重ねて形にすることです。大人数での作業だからこそ、私たちは「誰が担当しても同じ精度に届くこと」を追求してきました。作業の標準化や治具の活用を徹底し、個人の技量に頼る「属人化」を避ける。その理念が、私たちのものづくりの土台です。
今年は、設計陣から提案された「二段上反角」という前例のない設計思想を実現させることが、最大の挑戦でした。この設計の「やりたい」を叶えるため、製作フローそのものを根本から見直す“改革の年”となりました。本来は接合班の領域に近いCFRP桁(炭素繊維強化プラスチック)の加熱成形にも翼班が踏み込み、リブ(翼の断面形状を決める骨格)の設置方法も、従来の目視から治具を用いた精密なものへと刷新しました。試作と検証を繰り返し、設計・製作・運用を一本の線で結ぶための確かな手順を、一つひとつ確立していきました。
正直、常に順風満帆だったわけではなく、試作がうまくいかずに心が折れそうになった時期もありました。それでも、「この機体が大空を飛ぶ姿を必ず見届ける」という執念が、私たちを最後まで支えてくれました。翼は、チームの総合力を映す鏡です。設計者のこだわり、製作者の技術、そして運用を担う仲間の努力、その全てが翼に宿ります。この翼で、次の記録と次世代への想いを未来へ繋げる。それが、今の翼班の仕事です。

コックピット班(談:コックピット班長・加茂)
コックピット班は、機体の“心臓部”でありパイロットが乗り込むコックピットを製作する班です。金属パイプを加工するフレーム、発泡スチロールを削り出して作る流線形のカウル、そして塩化ビニールを熱で成形する透明なキャノピー。これら全く異なる素材と工法を、一人ひとりの手で形にしていきます。翼班の作業が標準化を追求するのに対し、コクピ班の作業は図面を元にしながらも、作り手の感覚を頼りに理想の形を追求する「美術」に近い側面を持ち、多様なものづくりに挑戦できるのが魅力です。
今年は、よりスリムで美しい機体を目指し、カウルの製作方法を刷新しました。昨年の「輪切り」方式から、今年は発泡スチロールのブロックから立体的に削り出す方式へ変更。これはパイロットとの一体感を高め、空力の効率化を図る目的もありますが、「何よりカッコいいから」というのが班員の偽らざる本音です。修正が難しい一発勝負の作業のため、半年近い時間をかけて理想の曲面を追求しました。この“美しいものを作りたい”という純粋な探求心が、私たちの原動力です。
設計図だけでは描けない、滑らかな曲面やシャープな造形。それらを、作り手の感性で具現化し、機体に命を吹き込むのがコックピット班の役割です。技術と美意識を融合させ、機能美を追求する。私たちが作り上げた「最高の仕事」が、パイロットに最高のパフォーマンスを発揮させ、チーム全体を次のステージへ押し上げる力になると信じています。



接合班(談:接合班長・福田)
私たち接合班は、機体の強度と安全の根幹を担う主桁(主翼の骨格)をはじめとした、機体全体のフレームワークを製作するチームです。CFRP(炭素繊維強化プラスチック)という素材に惹かれて入部した経緯もあり、素材への深い理解と、日々の作業で培った工具の扱いや加工技術が私たちの強みです。他班から「こんな部品が作れないか」と相談を受ければ、ありあわせの材料で形にしてしまう。そんな、チーム全体の「ものづくり」を支える確かな技術力が接合班にはあります。
そして、私たちの活動の根底には、何よりも「安全管理」への強い意識があります。1年生の時、目の前で機体のフレームが破損する瞬間を目の当たりにしました。設計の次に機体の骨格に触れ、その重要性を理解しているからこそ、「どうすればリスクを無くせるか」という視点を常に持ち、強度と安全に対してはどの班よりも厳しく向き合っています。
今年特に心血を注いだのは、尾翼の徹底的な軽量化です。機体の重心を最適化する上で、歴史的に「後ろが重くなる」という課題がありましたが、今年は特にパイロットが軽量なため、例年以上の軽量化が必須でした。強度を維持しつつ、いかに軽くできるか。1年以上にわたって設計と試作を繰り返し、昨年からさらに進化した構造にたどり着きました。また、職人気質で口伝が中心だった班の文化を変えるため、誰でもアクセスできる詳細な「引き継ぎ資料」の作成にも1年をかけました。確かな技術と安全への意識を、次の世代へ「接合」していくこと。それもまた、今の私たちの重要な使命だと考えています。

電装班(談:電装班長・栗山)
電装班は、機体の速度や高度を計測するセンサー群や、それらの情報を記録するデータロガーなど、鳥人間コンテスト機体における全ての電気系統を司るチームです。私たちの仕事の成果は、直接目には見えにくいかもしれません。しかし、本番のフライトで得られる飛行ログは、翌年の機体設計に繋がる何より貴重な財産です。このログがなければ、どんなに長い距離を飛べても、その飛行は一度きりのものになってしまう。「今年の成果を、来年、そして未来へ繋ぐ」という大きなプレッシャーと責任を背負っているのが電装班です。
今年は、急遽班長が交代するという予期せぬ事態からのスタートでした。知識も経験もゼロに近い状態から、設計と製作、そして後輩の指導をほぼ一人で担わなければならず、精神的にも肉体的にも苦しい時期が続きました。その中で特にこだわったのは、機速を測るピトー管の精度向上と、昨年の反省を活かした新しい操縦桿(ラダーレバー)の開発です。特に操縦桿は、次期班長が中心となってアイデア出しから設計まで行い、より直感的で確実な操作を可能にしました。
班長になって良かったのは、これまで関わりの薄かった他班のメンバーと、製作を通じて深く対話できるようになったことです。苦しい時期を乗り越えられたのも、他愛ない会話で支えてくれた仲間がいたからでした。当初は個人プレーになりがちだったチームも、今では後輩たちが自ら考え、動ける組織へと成長しています。このチームワークを来年に繋げ、最高のフライトデータを持ち帰ることが、自分たちの成長の証になると信じています。



パイロット・竜海
パイロットの役割は、チーム全員が一年間、全ての時間を懸けて作り上げた機体に乗り、その想いを翼に乗せて大空へ届けることだと考えています。幼い頃、医師から片耳が聞こえづらいことを理由に「パイロットにはなれない」と告げられた僕にとって、この場所は一度は諦めたはずの夢の舞台です。だからこそ、この役目を任された意味を、誰よりも深く噛み締めています。
みんなが作り上げた機体の性能を100%引き出すこと。それが僕に課せられた唯一にして最大の使命です。そのために、この一年間、誰よりも練習を重ねてきたという自負があります。週2回の乗り込み練習、毎週末のハンググライダーでの滑空訓練、そして仲間が作ってくれたシミュレーターでの反復練習。正直、プレッシャーは計り知れません。でも、「これだけやってきた」という揺るぎない自信が、今は恐怖よりも大きな力になっています。機体を信じ、仲間を信じ、そして誰よりも練習してきた自分を信じる。そのために、僕たちは飛び立つ瞬間まで訓練を続けます。
仲間と共に過ごす時間の中で、「この機体は、これだけ多くの人の技術とこだわり、そして数えきれないほどの時間の結晶なのだ」という実感が、責任感へと変わっていきました。僕のフライトは、決して僕一人のものではありません。翼班が寸分の狂いなく仕上げた主翼、コクピ班が僕との一体感を追求してくれたコックピット、接合班が安全の礎を築いたフレーム、そして電装班が未来へ繋ぐために搭載したログ。その全てが、僕の五感となります。
目標は、優勝。そして、まだ誰も見たことのない500mという景色です。プラットフォームに立った時、チーム全員の顔が浮かぶと思います。全員の想いを乗せて、一番遠くまで飛んでみせます。

今年の積み重ねは、数字としても結実した。2025年7月27日、滋賀・琵琶湖で行われた第47回鳥人間コンテスト〈滑空機部門〉で、東京理科大学「鳥人間サークル 鳥科」は433.02 mで準優勝(2位)。この距離は、2022年(425.65 m)を上回るチーム自己最長=自己新記録である。(優勝は上智大学の452.64 m)。設計・製作・運用・教育を一本の線でつなぐ私たちのやり方が、確かな再現性と記録に結びついた。
大会から3ヶ月経った今、今年度の軌跡を継承し、自己新記録を書き換える。必然の優勝へ鳥科は次の飛翔に準備を進めている。
